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かこさとし展で知る 子どもの心の伸ばし方ー正しい知識で、自分で考えられる子どもに! そして戦争のこと


「だるまちゃんシリーズ」や「からすのパンやさん」など子供たちが大好きな絵本作家「かこさとし(加古里子)」さん。
そんな加古さんの絵本の原画展「かこさとし展~子どもたちに伝えたかったこと」が、Bunkamuraザ・ミュージアムで2022年7月16日から開催されています。
小学生はなんと無料!
夏休みに合わせて、かこさとしさんが絵本に込めた子どもへのメッセージを生涯を通じて追える展示です。
そんな展示の見どころと、かこさとしさんが伝えたかったことをのぞいてきました。

かこさとしの世界を知るポイント1.未来を生きる子どもたちに伝えたいこと

小学校時代から飛行機に夢中になり、中学2年生で軍人になることを夢見た少年の夢はかなわず東京大学工学部1年生のときに終戦を迎えます。そんなかこさとしさんが工学とはまったく別の絵本作家になったのはなぜか? その答えが展示の最初にありました。
それは、「戦争」を生き延びたこと。
「軍人の学校に行った同級生たちは(中略)飛行機乗りとなって死んでいきました(中略)。自分はその生き残りというより『死に残り』でした。死に残りの自分は、これから何の償いもせず、出来ずに、おめおめと生きて行くのか。そう思うと、自分が本当にだらしなく、はずかしい大人であり、必要のない人間に見えました」(「未来のだるまちゃんへ」)

そんな大学生かこさとしさんの気持ちが伝わってくるような280ミリ✕200ミリの小さな板に描かれた「自顔遊画」と晩年読んだ自画像が展示の前半に設置されています。
緑や青も使用して斜めに構えた皮肉っぽい表情青年を描いたこの自画像は、今ではたくさんの人で明るく賑わう東大の五月祭に出品されたもの。

当時かこさとしさんが自分で書いた解説文には「戦争、指導層と庶民の無定見、節操のなさに人生の目標を失い、ニヒルな自画像と次々描いてうさを晴らしていた」と書かれていたと知ると、戦争で死に損なった気持ちを保つために、描かないではいられない作家の原点がここにあったのかもしれない、また、子どもたちに向けた作品を描く前に描かれたこの作品を含む油絵作品の奥に、絵本の目線と重なるものがあるに違いないという気持ちから、しばらく眺めてしまいます。

かこさとしの世界を知るポイント2.目の前の子どもに喜んでもらうために描く

中盤は、働きながら医療・福祉・子ども会活動を行う「セツルメント活動」に参加し、そこで約10年にわたり子どもたちとかかわるなかで、子どもに向けた作品をうみだしはじめたかこさとしさんの代表作「だるまちゃんシリーズ」や「からすのパンやさん」などの展示が。

展示のほとんど原画には、絵本のように言葉が入る前の絵だけのもの。
幼稚園や保育園、家庭などで子どもたちが何度も読んでもらう機会が多い印象的な場面が多く見られます。

文字がない状態の原画を見ながら親子で本を読んだときの思い出や、どういう場面だったかなどを教えあいっこしながら見ていくのも楽しい体験。
かこさとしの世界を知るポイント3.科学絵本に託した子どもたちに伝えたかったこと
中盤以降には、科学絵本のコーナーが続きます。
「だるまちゃんシリーズ」や「からすのパンやさん」などで知られるかこさとしさんですが、絵本作家としてのデビューは1959年の「だむのおじさんたち」。
ダムで働く人々やダムの構造を俯瞰する目と細部を書き込むかこさとしさんらしい作品。ここから絵本の依頼がどんどん飛び込むようになり、建設、自然科学、身体、社会などをテーマにした絵本をたくさん生み出していきます。

科学絵本は全体を図解でワクワクするように表現しながらも、細部への細かい書き込みが行われ、俯瞰しつつ詳細を子どもが理解しやすくなる構成のものが多いようにかんじます。
また、遊びゴコロが感じられるものも多く、チラシのひだり上にもある『どうぐ』という作品のなかで、車のパーツをすべて解説している絵に注目してみると、どれ一つをとってもなかったとしたらクルマが動かないたくさんの車の部品パーツを丁寧に描きながら、よく見てみると中に小さなマスコットが一つ描かれているのを見つけられます。
これは前のページにあるクルマのミラーにつけられているマスコットです。
かこさとしさんの科学絵本にはこういった遊び心とも仕掛けとも、子どもへの挑戦ともとれる書き込みがよくされています。
文字を読んでお話を頭で理解する大人はこういうところにはなかなか気づきませんが、子どもはよく気がついていることがあり、文字のない絵本の展覧会だからこそ、子どもとのおしゃべりのなかでそういったお互いの気づきを発見しあって楽しむ時間にもなりそうです。
展示の解説には、
「子どもたちにこの世界に対して目を開いて、それをきちんと理解して面白がってほしい、社会を理解することで生きることをうんと喜んでほしい」
という趣旨のメッセージが多く見られ、この気概で取り組むからこそこれほどの作品を作ることができたのだということがよくわかります。
例えば「身体」についての絵本を集めたコーナーには以下のような解説がありました。
「どうして歯を磨かないといけないのか? その理由がわかれば子どもたちは自分で何をしたらいいか考えて行動することができます。
私達は食べ物をどうやって消化するのか?手や足はどうやって動いているのか?知っているようでわからないことが多い自分たちのことを知ることができるように、かこは身体をめぐる絵本づくりにも積極的に取り組みました。
『わたしののうとあなたのこころ』では、心の問題にも取り組んでいます。子どもたちが持つ言葉にならない不安や疑問にわかりやすい図解とやさしい言葉で的確に答えています」
わたしは親として子どもに毎朝毎晩「歯磨きをしなさい!」と言い続けいますが、なかなか身につかない様子に毎日ため息をついています。
もしかしたら「歯磨きをしなさい!」ではなくて、なぜ葉をみがかなければいけないか? をもっと子どもの納得がいくように上手に伝えることを考えてもいいのかもしれない。そんな気持ちにもなりました。
【かこさとし むしばの本】
・むしばミュータンスのぼうけん
・むしばちゃんのなかよしだあれ
・むしばになったどうしよう
・はははのはなし
・ぼくのハはもうおとな
・6がつ 6ちゃん はっはっは
詳しくは上記リンクからチェック!
かこさとしの世界を知るポイント4.縦1,5メートル、横5メートルにもなる「生命図譜」初公開
展示の最後は圧巻の縦約1,5メートル、横約5メートルの生命図譜です。未完の「宇宙進化地球生命変遷放散総合図譜」と名付けられています。わたしたちはどこから来てどこへ向かうのか? 世界のなりたちを考える壮大な科学絵本の世界を垣間見れます。

生命の誕生からの進化の歴史を薄い紙を何枚もつなぎ合わせて描いている様子は圧巻!
つなげられた紙はレポート用紙横16枚✕縦5枚ほど、正確に数えてくればよかったのですがおよそ100枚弱のようでした。
生命進化図のようでもあるけれど、一部にはかこさとしさん自身の生命への解釈もふまえて自分の理解のために作られたもののようです。
とにかく全体像を把握したい、全体を把握してこのことを子どもにわかりやすく伝えたいというかこさとしさんの執念のようなものが伝わってくる作品です。
子どもとこれを見たときに、調べて編集してまとめるということを積み重ねて90過ぎまで生きた人の生き様の集大成のようにも見えました。

- 開催日時/2022年7月16日~9月4日
10:00~18:00、毎週金・土曜/~21:00(いずれも入館は各閉館時間の30分前まで) ※休館日は7月26日 - 開催場所東京都/Bunkamura ザ・ミュージアム
- イベント料金当日/一般1400円、大学生800円、高校・中学生500円、小学生・未就学児無料 ※大学生、高校・中学生は当日券のみの取扱い
※会期中のすべての土日祝および8月29日~9月4日は一部オンラインによる入場日時予約が必要。詳細はホームページを要確認
この展覧会についてもっと知りたいときは図録をチェック!

「かこさとし展~子どもたちに伝えたかったこと」の図録は展覧会名と同じ「かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと」書籍サイズの図録のため、いつもそばにおいておいて読みたくなる、そんな書籍になっています。
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